2015年7月10日

オンデマンド印刷とオフセット印刷の違いとは?安さ、品質を比較してみた

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印刷からオンデマンド印刷とオフセット印刷に変わった背景

以前は全く聞かなかったけど、最近良く聞くようになった印刷用語のひとつが、「オンデマンド印刷」です。それとともに「オフセット印刷」という用語も新しく聞くようになったかもしれません。

皆さんも、印刷物をお願いする場合に、「オンデマンド印刷にしますか、オフセット印刷にしますか?」ということを聞かれたことはないでしょうか。

これは、これまでの印刷方法に新しい流れが加わったため生まれてきた言葉なのです。

もともと印刷といえばオフセット印刷が主流でした。そのため、わざわざオフセット印刷という言葉を使わずに「印刷」だけで良かったのですが、オンデマンド印刷が登場してからは、オンデマンド印刷とオフセット印刷は2大主流になっています。

もちろん、それぞれ特徴があるため、目的に合わせて最適な印刷方法を選択していかなければなりません。

「そんなこと言われても、よくわかんないよ!」

という方のために、今回はオンデマンド印刷とオフセット印刷の違いとそれぞれを使い分ける方法をご紹介したいと思います。

オンデマンド印刷が増えている理由に関しては、以下を参考にしてみてください。

メリットデメリットでわかるオンデマンド印刷が伸びる理由と背景

オンデマンド印刷とオフセット印刷の違い

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オンデマンド印刷とオフセット印刷の違いを簡単に説明すると、印刷の際に「版」を使うか、使わないかです。

版を使うのがオフセット印刷、版を使わないのがオンデマンド印刷です。
※版なしオフセットもあります

小学生の時に作った芋版をイメージしてください。まず何らかの絵を芋に描いて、彫り、あとはインクに浸すと、何十、何百というスタンプを押すことができます。

これが「版」です。物体として、転写するための「版」が存在します。

対して、オンデマンド印刷には「版」がありません。これは、元データをコピーして何枚も出力できるパソコンとプリンターをイメージしてもらえば良いです。

もう1つの大きな違いは、印刷機のサイズです。

オフセット印刷機は大量の印刷を行うため、大きなもので20メートル以上、高さも3メートルほどあったりします。見た目は工場にある機械そのもの。

逆にオンデマンド印刷機は、大きなものでも4~5メートル、高さも2メートル以下で、見た目は大きくスタイリッシュなコンピューターという感じです。

つまり、オンデマンド印刷の方が、従来のオフセット印刷機に比べて省スペースで良いということになります。

オンデマンド印刷とオフセット印刷はどちらが綺麗?

現在の技術では、より細かい線の再現やベタ色がきれいに仕上がるのはオフセット印刷です。業務用の複合機で刷ったカラープリントと印刷会社で刷ったポスターの違いはわかると思います。

もちろん、オンデマンド印刷は複合機よりも精細で印刷の質は良いのですが、それでも版を作るオフセット印刷と見比べてみると、印刷技術的にはまだ追い付いていない状況です。

文字メインのデザインや、くっきりとした輪郭で色分けされたデザインではほとんど違いはないのですが、淡い色調の表現、グラデーションの滑らかさはオフセット印刷の方が明らかに表現が豊かです。

ただ、オンデマンド印刷が普及しだしてまだ10年ほどです。家庭のプリンターの質がどんどん進化しているのを見てもわかる通り、数年レベルでオフセット印刷の再現性と変わらなくなるかもしれません。

オンデマンド印刷とオフセット印刷はどちらが安い?

どちらが安い?どちらがお得?というのは、どのようなものを、どの大きさで、どれ位印刷するか、によって変わります。

用紙サイズ、厚さ、種類…用途に適した印刷でコスパを上げる

端的に言うと、部数が大量ならオフセット印刷、部数が少量ならオンデマンド印刷が安く印刷できますが、料金設定は印刷会社によって異なるため、確認するしかありません。

・オフセット印刷機の方がオンデマンド印刷機に比べて大量に印刷できる
・オフセット印刷機は製版作業が必要になる
・オフセット印刷機の方がオンデマンド印刷機に比べて、設置スペースが大きい
・オフセット印刷機はオンデマンド印刷機に比べて、稼働に電気代がかかる

この辺りを踏まえつつ、印刷業界の適正価格と合わせながら印刷料金が設定されます。一般的には500~1,000枚を基準に考えると言われますが、シチュエーションによって変わります。

会社の封筒の場合

→何年にも渡って使い続けるなら、5,000部をオフセット印刷する方がお得
→住所や電話番号が変わる可能性があるなら、1,000部以下をオンデマンド印刷する方がお得

折り込みチラシの場合

→広範囲に1万部を折り込みたいならオフセット印刷の方がお得
→折り込む地域で2,000部ずつ内容を変えたいならオンデマンド印刷の方がお得

商品パンフレットの場合

→主力商品として、一気に営業をかけたいなら5,000部をオフセット印刷する方がお得
→テストマーケティング的に使いたいなら、オンデマンド印刷で500部印刷するほうがお得

もちろん、サイズによって値段の差異が出るためうまく使い分ける必要はありますが、詳細は印刷会社に相談をするのが一番でしょう。

オンデマンド印刷とオフセット印刷をどう使い分ければ良い?

というわけで、オンデマンド印刷とオフセット印刷をどう使い分ければ良いか、そのポイントを簡単に見ていきます。

印刷使い分けポイント1.印刷納期の早さ

オンデマンド印刷はデータを送るだけなので、オフセット印刷よりも一般的に早い。

印刷使い分けポイント2.デザイン変更の柔軟さ

オンデマンド印刷の方がオフセット印刷よりもスケジュール変さらに強いため、オンデマンド印刷の方が柔軟にデザイン変更できる。

印刷使い分けポイント3.写真印刷の再現性

オフセット印刷の方がオンデマンド印刷よりも色や線描写の再現性に優れている。

印刷使い分けポイント4.大量生産重視のチラシ

オフセット印刷の方が大量に印刷できるため、オンデマンド印刷よりもコストパフォーマンスに優れている。

印刷使い分けポイント5.納期が早く発行部数が少ない会報誌

オンデマンド印刷の方が急ぎ対応に強いため、オフセット印刷よりも会報誌には向いている。

印刷使い分けポイント6.卓上カレンダーなどのノベルティ

部数が限られている少量印刷なので、ノベルティにはオンデマンド印刷の方が向いている。

印刷使い分けポイント7.その他オンデマンド印刷を使うシチュエーション

・急なイベントでパンフレットを印刷したい
・毎月など決まった時期に合わせた販促物を印刷したい
・年賀状を数百枚単位で印刷したい

印刷使い分けポイント8.その他オフセット印刷を使うシチュエーション

・A1以上の大判ポスターを綺麗に印刷したい
・ハガキや名刺等を大量に印刷したい
・色数の多いチラシやグラフィックの再現性を重視したい

オンデマンド印刷とオフセット印刷の違いまとめ

以前の印刷業界は、いかに大量に印刷し大量に販促活動に繋げていくか、という考え方が主流だったため、小ロット印刷を軸に考えることはありませんでした。

そのため、何らかの理由で小ロット印刷を必要とする方には、大ロットメインのオフセット印刷は割高だったでしょう。

ところが、オンデマンド印刷が増えてからは印刷自体に幅が出たため、シーンによって大ロット、小ロットの使い分けが可能になりました。

また、以前に比べるとどのような業種も業務展開スピードが増し、印刷もトライ&エラーを重ねることが増えてきたと感じます。つまり、オンデマンド印刷の需要は大きくなっているのです。

もちろん、選択肢が増えることは顧客からすると嬉しい半面、考えることが増えてわかりにくくなってしまいます。これは印刷会社がわかりやすい選択肢を提示できるか、という課題でもあります。

業界全体を巻き込んだパラダイムシフトが進む中、印刷会社も単純に印刷をするだけではなく、印刷物の種類によって、顧客に最適なソリューションを提供する「印刷ソリューション事業」がメインになりつつあります。

わかりにくくなってきた今だからこそ、周りの印刷会社にお気軽に相談することをおすすめします。